最初に断っておきます、長文です。よろしくお付き合い下さい。
公演も無事に終了したので、全体的な話を含め、北区へのわたしの思いを含め、いろいろ書き殴って行こうと思います。
土曜日2公演、日曜日1公演を無事に拝見。
初日はかなり様子見な感じでしたが、だんだんとつか芝居を思い出したのか、神尾さんがぐんぐんと良くなって行きます。
山崎がだんだんと狂気の域へ、そしてそれにつられるように熊田もまた狂気へと誘われていきました。
自分の青春だった60年、70年安保、そして小夜子がいて、充実していた日々。
小夜子のことを単なるスパイで二人の間に愛情は無かったのだと思いたい気持ち。
でも心が触れあっていたと思えた時もあった。でも突き放してしまった。そして殺してしまった…。
そんな思いに踏ん切りを付けようと、熊田にもう一度デモの先頭に立って欲しい、と山崎は懇願する。
また、熊田は自分が仲間を裏切ってしまったことを鎖とし、自分はもう体制側に落ちて日和った生活を送っていることが、ただただ懺悔なんだと思って暮らしていた。
でも妻を殺した、自分の右足を奪った、背中を落とした、機動隊を許したことなんて本当は無かった。
伝説の石、飛龍が泣くたび、革命を続けたい思いと自戒の念が入り交じり、自分を許せなくなっていったのだろう。
そんな不器用な人間達の生きた安保闘争。
登場人物の誰もが馬鹿なまでに不器用で、そして愛おしい。
つかさんの初期の作品はシンプルでそして人間への愛が満ちあふれていて大好きだ。
舞台から来る人間のエネルギーがすごすぎて圧倒される。
膨大に発せられる台詞に重みがあって、本当にどーんとお腹に響く。
演じる方はもちろん大変だが、受ける方も結構体力勝負。
この芝居が上演された当時は風間杜夫、平田満、井上加奈子、石丸謙二郎というキャストだったそうだが、そりゃすごかったんだろうなあ、と容易に想像できる。
…岡村さん情報によると、「三浦、平田または、加藤、平田または、長谷川、平田のベアしか存在しない。」だそうです。どうもすいません。これはこれですごかったんだろうし、見たいのは変わりないわけだが。(6/8追記)
今回演じたのは★☆北区つかこうへい劇団の一期生の神尾佑(鈴木祐二)と二期生の吉田智則。そして八期生の渋谷亜紀。
公演を重ねるたびに、昔の口立てしてもらった頃の引き出しが開いてきたんでしょう。
だんだんと良くなってきました。そう、ブレーキの壊れた車のアクセルを踏みっぱなし、っていう感じの、「つか芝居」って感じの、下手なんだけどエネルギーだけは伝わってくるっていうか。いや別に下手じゃないんだけどね。役者の毛穴からエネルギーが発散されて客席まで届いちゃうみたいな。客席も熱を持っちゃうみたいな。
台詞だけじゃないそういう勢いが、久々のつか芝居で、それも北区の芝居で感じられたことが、ものすごく嬉しくて泣けちゃいました。
つかさんはいつも役者の限界を要求して、楽前でもまた油断しないように脚本や演出を変えちゃう、と聞いたことがあります。
役者のギリギリ感をいつも見せようとしていた。「結局最後に表現されるのは役者の人間性なんだよ」と言ってた。
それがあの、膨大な台詞に表現されていたんだなあ、と。(噂によると熊田の一人芝居のところの台詞、原稿用紙10数枚あるそうですよ。)
芝居というものを、日本というものを、本当につかさんは愛していたんだなあ、と実感し、またつかこうへいは本当に死んだのだと、そう痛感しました。