手癖も女癖も悪い杉の市が金で「検校」という位を手に入れようと成り上がっていき、そして身を滅ぼすことになってしまった物語をとある座頭が浄瑠璃として話すお話。
「天保十二年のシェイクスピア」の感じと似ていたな。世界観が。もちろんラストシーンも。あのラストシーン、えげつない。でも嫌いじゃないけど。
古田演じる「杉の市(=のちの藪原検校二代目)」はほんとにどうしようもないやつなんだけど、いろんなものに決別をつけていく時に哀しさが溢れていて切なくなった。自分が成り上がるためには何でもやる杉の市だけど、でも、幸せさがしていたんじゃないかって思うんだよね。父親はお金欲しさに座頭を殺した。その結果自分の子どもが目が見えないという因果応報に苦しめられ自殺。母親は杉の市を育てるために男に体を売っていた。結局金のためにいろんな犠牲を払ってきた杉の市。そんな母親や父親への彼なりの親孝行っていうか。そんなことも少し見え隠れしたりして。
それにしても古田の「早物語」、そして壤さんの浄瑠璃、見事だったな。
公演:藪原検校
日程:5月8日~5月31日
場所:Bunkamuraシアターコクーン
作:井上ひさし
演出:蜷川幸雄
出演:古田新太・田中裕子・段田安則・六平直政・梅沢昌代・山本龍二・神保共子・松田洋治・景山仁美・壤晴彦
座席:S席1階M列左ブロック 9,000円
時間:3時間15分(途中15分休憩)