日本海に面した町の古びた映画館。清村盛は有名な俳優だったが、3年前に突然引退して、妻ぎんとともに生まれ故郷の弟が経営する映画館でひっそりと暮らしている。そこへ、昔の俳優仲間であった名和水尾と彼女の夫、連がやってくる。かつて盛と水尾は激しい恋に燃えていた。訪れた水尾が見たのは、すっかり狂気にとりつかれてしまった男の姿だった…。(Bunkamuraサイトからの引用)
まず思ったのは綺麗な日本語がいっぱいだということ。清水さんの脚本は「心情あふるる軽薄さ2001」に続き二回目なので、どこがいいとかそういうことは良く分からないのだが、本当に綺麗な台詞がいっぱいで、見ていなくてもその台詞の綺麗さにうっとりできた。
蜷川さんの演出も前回の「あわれ彼女は娼婦」とは違って、「これしかない!」って感じの演出だったように思える。途中「孔雀」の話を水尾とするところは睡魔に襲われたが、それ以外は(特に二幕目は)演出も良かったし、役者さんたちもすごく良かった。
役者でいえば、一番観客に近いのが秋山さん演じる「ギン」という妻。この姿にこの名前はさすがにちょっと合わないとは思うんだが、必死に彼の正気を取戻してあげたいという捨て身の姿が心を打った。最後の舞台から客席を通っての退場の仕方も、いろんなものからの決別を思わせてくれた。
新橋さんが出てくると、空気が変わるのもなかなかすごかった。新橋さん大好き♪
常盤ちゃんはなー。この世界にはぴったりだったんだけど、黙ってれば綺麗なんだけど…。後ろを向いただけで台詞聞こえてこないし、ぎゃんぎゃんうるさいしで、盛がこんな人を好きになった理由が分からなかった。
「幻の観客」良かったな。。昨日「エキストラ」を見て来たせいもあるんだけど、一人一人に人生が感じられてすごく良かった。死んだ映画館での若さが存分に表現されていた。
これにも象徴されているようにたくさんの対比がこの作品の中に登場する。「美しい死」というのも然り。老いに逆らえないがどうしても受け入れることができない盛と、永遠の美(=若さ)を持った孔雀の剥製や、自分の死んだ姉の美しさの対比。そうそう最後の「桜が散る」シーンもまた、美しいものが散って行く美しさを表していて、日本人の美学をそこかしこに見せられたような気がする。
公演:「タンゴ・冬の終わりに」
場所:Bunkamuraシアターコクーン
日程:11月4日~11月29日
作:清水邦夫
演出:蜷川幸雄
出演:堤真一・常盤貴子・秋山菜津子・毬谷友子・高橋洋・月川悠貴・新橋耐子・沢竜二・段田安則
座席:1階F列左ブロック S席9,000円
時間:約3時間(途中15分休憩)