2006年11月の記事一覧

日本海に面した町の古びた映画館。清村盛は有名な俳優だったが、3年前に突然引退して、妻ぎんとともに生まれ故郷の弟が経営する映画館でひっそりと暮らしている。そこへ、昔の俳優仲間であった名和水尾と彼女の夫、連がやってくる。かつて盛と水尾は激しい恋に燃えていた。訪れた水尾が見たのは、すっかり狂気にとりつかれてしまった男の姿だった…。(Bunkamuraサイトからの引用)

まず思ったのは綺麗な日本語がいっぱいだということ。清水さんの脚本は「心情あふるる軽薄さ2001」に続き二回目なので、どこがいいとかそういうことは良く分からないのだが、本当に綺麗な台詞がいっぱいで、見ていなくてもその台詞の綺麗さにうっとりできた。
蜷川さんの演出も前回の「あわれ彼女は娼婦」とは違って、「これしかない!」って感じの演出だったように思える。途中「孔雀」の話を水尾とするところは睡魔に襲われたが、それ以外は(特に二幕目は)演出も良かったし、役者さんたちもすごく良かった。

役者でいえば、一番観客に近いのが秋山さん演じる「ギン」という妻。この姿にこの名前はさすがにちょっと合わないとは思うんだが、必死に彼の正気を取戻してあげたいという捨て身の姿が心を打った。最後の舞台から客席を通っての退場の仕方も、いろんなものからの決別を思わせてくれた。
新橋さんが出てくると、空気が変わるのもなかなかすごかった。新橋さん大好き♪
常盤ちゃんはなー。この世界にはぴったりだったんだけど、黙ってれば綺麗なんだけど…。後ろを向いただけで台詞聞こえてこないし、ぎゃんぎゃんうるさいしで、盛がこんな人を好きになった理由が分からなかった。

「幻の観客」良かったな。。昨日「エキストラ」を見て来たせいもあるんだけど、一人一人に人生が感じられてすごく良かった。死んだ映画館での若さが存分に表現されていた。
これにも象徴されているようにたくさんの対比がこの作品の中に登場する。「美しい死」というのも然り。老いに逆らえないがどうしても受け入れることができない盛と、永遠の美(=若さ)を持った孔雀の剥製や、自分の死んだ姉の美しさの対比。そうそう最後の「桜が散る」シーンもまた、美しいものが散って行く美しさを表していて、日本人の美学をそこかしこに見せられたような気がする。

公演:「タンゴ・冬の終わりに」
場所:Bunkamuraシアターコクーン
日程:11月4日~11月29日
作:清水邦夫
演出:蜷川幸雄
出演:堤真一・常盤貴子・秋山菜津子・毬谷友子・高橋洋・月川悠貴・新橋耐子・沢竜二・段田安則
座席:1階F列左ブロック S席9,000円
時間:約3時間(途中15分休憩)

テレビ番組のロケ地。二つの派遣会社から派遣されたエキストラたちが出番を待っている。教師を定年退職した後にこの仕事を始めて半年経つ鳴海(角野)やこの現場が初仕事の八代(伊東)なども農民の格好をしながら出番を待っていた。エキストラの人格を無視していろんな要求がされる中、エキストラから役者に登り詰めた田所がやってくる。簡単に言えばこんな感じか。

三谷さん作・演出ってことだったが、やっぱりヴォードヴィルの公演用に少し小さめの舞台になっちゃってたな、というのが第一印象。角野さんや伊東四朗さんも劇団への客演ということで気配を消して周りに溶け込んでいたような感じ。
でも全然この話に入り切れなかったのよ。わたしは仕事は感情でするもんじゃない、って思っている人間で、もちろんADがエキストラのことを人間として扱っていない非常さには頭に来るところもあったけど、死にそうな夫をかかえた妻が「これが一緒に映れる最後の機会なんです」と言って出演を頼むシーンには正直「????」という感じ。使えない人を使ってどすんのよ、と。あっちもプロだからそれはできない相談でしょうとほんとに思った。だから最後の方のこのエピソードが中心となるあたりはもうなんかつまらなくて(苦笑)。
四朗が何をやっても監督にダメだと言われて外の人にチェンジさせられてしまう、というエピソードももっとうまく使えるような気がしてならなかったし、なんか微妙だった。
そんな中の癒しは大森さん演じる普通の人。エキストラの仕事をしている妻を連れ戻しに来たのだが、その影の薄さを買われ、いつしかエキストラという仕事を生き生きとやり始める。最後には唯一の台詞ももらって。このエピソード良かったな。大森さんのキャラも十分に生かされていたと思いました。

公演:東京ヴォードヴィルショー「エキストラ」
場所:紀伊國屋サザンシアター
日程:11月10日~11月29日
作・演出:三谷幸喜
出演:佐藤B作・佐渡稔・石井愃一・市川勇・山口良一・たかはし等・あめくみちこ・山本ふじこ・大森ヒロシ・まいど豊 ほか
座席:8列右ブロック7,000円
時間:2時間10分

初演のころはなんとなくスルーしていた公演。見ておけば良かったな…。

とある民家の中津家。正行とその友人達が遊ぶ隣の部屋ではお母さんが男を連れ込んでいた。正行が海外へ行くというので留守番を任されることになった広瀬は、中津から自分の家の近くの防空壕に住む何人かの面倒を見させられる羽目に。防空壕には中津の小学校時代の同級生たち(孝之・柴・陽介・菊沢)が17年間も監禁状態にあった。陽子の彼氏宮本が住むところがなく中津家に同居することになり、広瀬は監禁の手伝いを頼み、そのまま宮本は防空壕へ居座ることになってしまう。行方不明になっていた明夫がこの防空壕で見つかったり、母親がシャベル持って乗り込んで来たり、とまあそんな感じのあらすじ。

監禁という題材を扱ってはいるものの結局片思いの成れの果てというか、いいように解釈すれば「不器用な愛の形」というか。母親が男を連れ込むことによる「女」というものに対する絶望と憎悪そして「男と切り離せばどうよ?」という淡い期待のようなもの。好きな菊沢を監禁しようと思い立ち、彼女が一人じゃ淋しいだろうと友人も一緒に監禁することに至る心情は、わからないではないっていうか。彼女の要求に応えたいという気持ちもあるし。まあ狂っちゃってるけどね(苦笑)。出てくる行動は違えど、こんな感じの心情って誰しもが持っているものだと思う。

この話の中に出てくる宮本が八嶋くんだったからか、いい具合にアクセントになっていて、芝居全体にメリハリが出たように思える。中国人ということが原因なのか上司に騙され借金まみれで居場所をだんだんと失って行く宮本が、最後に選択したのは防空壕での暮らし。この人もまた不器用な人生だったんだろうな。
あとは陽介のポジションがいいな、と思った。中津の片思いの告白を聞いて監禁されていながらも「中津は菊沢が好き。おれが中津が菊沢のことを好きなのが好き」と言い切れてしまう。陽子に外の世界は昔と変わっていないと聴いていながらも、防空壕に残る決心をする陽介は何を考えていたのだろうといろいろと考えた。
この防空壕は「胎内(というか子宮)」を思い出させた。中津がここから菊沢たちを出せる事になった時、やっと自分が母親からの呪縛から開放されるのかもしれなかったのにな。でも中津はそれを選択しない。正確にはどちらも選択できずに、結局菊沢たちにその判断をゆだねてしまうところがなんかもうやり切れなくてね。

公演:阿佐ヶ谷スパイダース「イヌの日」
場所:本多劇場
日程:11月9日~11月26日
作・演出:長塚圭史
出演:内田滋・剱持たまき・八嶋智人・大堀こういち・村岡希美・玉置孝匡・松浦和香子・中山祐一朗・伊達暁・長塚圭史
座席:C列右ブロック 5,500円
時間:2時間40分

レディスデーだったので見てきました。
ドラマ、映画(日本シリーズ)を受けての本作品。完結編でございます。
ぶっさんの死から3年たっても相変わらずうだつのあがらないキャッツのメンバー。スーパーを建てるという土地でバンビはある声を耳にする…。

「友人の死」という現実に対するそれぞれの反応が見ていてリアルだなーと思った。3年という時間がまた中途半端で(苦笑)。3年が経つとこの先は一挙に進んでくからなー。
秀逸だったのは葬式の場面で、卒業してから全然会わなかった人たちが泣いていて、一番近かった自分たちが冷めてしまったという場面かな?リアルだよなー。こういうところが。
あとはぶっさんが実はみんなのそばにいたんだよって場面。(二回あたりから)
なんかいいなーって思った。暖かい気持ちになれた。見守っているんだけど相変わらずめんどくさくて役にたってなくて、ぶっさんぽいっていうか、ぶっさんらしらが出てた。

2006年10月公開「木更津キャッツアイ~ワールドシリーズ」<オフィシャルサイト
脚本:宮藤官九郎
監督:金子文紀
出演:岡田准一・櫻井翔・酒井若菜・岡田義徳・佐藤隆太・塚本高史・阿部サダヲ・山口智充・ユンソナ・栗山千明・MCU・橋本じゅん・高田純次・レッド吉田・古田新太・森下愛子・小日向文世・薬師丸ひろ子
上演時間:2時間10分

とある南の島。そこでは若者がすっかりいなくなり、老人だけでホテルを経営していたりしながら暮していた。そこのホテルに老婆が3人で観光に来たところから物語が始まる。この島の青年団がホテルに来て「クイーンコンテスト」に出る予定だった人に逃げられて老婆の一人にコンテストに出てもらうように頼んだり、この他にも市川雷蔵やら宇宙科学を勉強している学者やらがいろいろと絡んで来て…。
とかそんな感じのストーリー。

正直、何をいいたいのか分からないというか、感想書くの難しいなー。(^^;;;
小ネタとか笑えるところはあるんだけど、なんかね、バラバラした感じがして、何を感想として語ったら良いのかも分からないです。キャストが多すぎるのもなんだか微妙だったな。
まあベテラン勢の青年団3人と老婆3人とのやり取りや、伴さんのピアノのあたりとか、杉山さんの「今夜は少し宇宙が近い気がする」というあたりはさすがに見事だったんだけどな。他がいかんせんバラバラすぎてどうしたいのかがよく分からないまま終わってしまった。
最初の5分で寝そうになっちゃったし。(いや、それでも全部見たけど、後ろの人は寝息立てながら爆睡してたよ)

公演:劇団扉座「ご長寿ねばねばランド」
場所:紀伊國屋ホール
日程:10月28日~11月4日
作・演出:横内謙介
出演:岡森諦・六角精児・杉山良一・有馬自由・山中たかシ・犬飼淳治・累央・中原三千代・伴 美奈子・高橋麻理・松田かほり ほか
座席:F列センターブロック 4,200円
時間:2時間くらい

古田を迎えて松尾さん主役のウーマンリブってことで結構期待して劇場へ。席はなかなか見やすいお席でした。
冒頭の殺戮シーンでワクワクするも、なんだかその後のしばらく続く、まったりすぎるやり取りに「ウーマンリブ発射」を思い出した。

公演:ウーマンリブvol.10「ウーマンリブ先生」
場所:池袋サンシャイン劇場
日程:11月2日~11月19日
作・演出:宮藤官九郎
出演:松尾スズキ・池津祥子・伊勢志摩・宍戸美和公・猫背椿・皆川猿時・荒川良々・平岩紙・少路勇介・星野源・宮沢紗恵子・古田新太
座席:S席1階14列センターブロック 6,000円
時間:2時間20分

鹿賀さんと市村さんのミュージカルでのコンビは四季以来。ということで聖子ちゃんも出るしって言うんでチケットをホリプロで取って行ってきました。銀河劇場。
劇場の名前が変わっても特に何も変わってなかった。

はてさて、鹿賀さん扮する詐欺師の元に修行したいと市村さん演じるペテン師がやってきます。二人で一人の女性(奥菜)を落とそうといろいろ策略を巡らしまして…。
というお話なんだけど。
まず、高田聖子の出番の少なさに唖然。その「いつものキャラ」っぷりにがっくり。歌えるし踊れるんだからもうちょっとどうにか上手く使う事って出来なかったのかしらね?
まあ元がブロードウェイミュージカルだから話を作るわけにもいかないのは分かるんだが、どうにもこうにも煮え切らない。
奥菜恵も最後のやっぱり詐欺師だったところのネタばれしたところは良かったけど、そこまでの「お嬢さん」っぷりが見ていてなんか…好きじゃない。かなり最初の方でこれ騙されてるよね?って分かっちゃったし。もうちょっと意外性のあるキャスティングはできなかったものなのかね?
市村さんのキュートキャラは可愛かったけどさぁ、なんか微妙な公演でした。

公演:ペテン師と詐欺師
場所:天王洲銀河劇場
日程:10月6日~11月5日
演出:宮田慶子
出演:鹿賀丈史・市村正親・奥菜恵・愛華みれ・高田聖子・鶴見辰吾 ほか
座席:S席1階3列左ブロック 12,600円
時間:2時間45分(休憩15分含む)

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