野田さんは絵空事を伝えるのがとても上手だ。いつもその「童話」の世界に引きずり込まれる。
今回の「パンドラの鐘」はそれだけではない「原爆」というテーマも盛り込みいつになくリアル。
彼の作品には答えはない、がすごく身近に感じてしまうのは何故だろう?
「そういうことがある」という事実を淡々と伝えていく。
ヒメ女が滅びる国の女王としての最後の仕事として鐘の中に入り、ミズオの手で埋めてもらう、という決断をする。
その時の「ハイ」というヒメ女の顔には女王としての誇りだけでなく愛する人に最期を看取ってもらう、
という嬉しさが満面の笑みとともに感じられた。なんていう笑顔なんだろう??
自分が死んでいくというのに、これが自分の望んでいた結果であるというような笑顔。その潔さに涙が止まらなかった。
そして「化けてでろよ」と鐘をまるでヒメ女かというようにいとおしくなでるミズヲ。あまりにも美しかった。
前半はばたばたした感じで分散したところも見られたが後半は見事だった。
見終わった後拍手をする手を止めることができなかった。
この作品、この公演に出会えたことを本当に幸せだと思う。
公演:NODA MAP「パンドラの鐘」
場所:世田谷パブリックシアター
日程:11月6日〜12月26日
作・演出:野田秀樹
出演:堤真一・天海祐希・富田靖子・古田新太・松尾スズキ・銀粉蝶・入江雅人・八嶋智人・明楽哲典・春海四方・戸谷昌弘・野田秀樹 ほか
チケット:S席8,000円